ミズくまくん

世界に誇る「水の山」プロジェクト ABOUT "MIZUNOYAMA" PROJECT

ミズくまくん

「水の山」コラム

#011 高校生×北杜市農業企業コンソーシアム(NXアグリグロウ株式会社)

高校生によるパートナー企業の視察(2) NXアグリグロウ株式会社編

北杜市で進行中の「水の山ユースアイデアプロジェクト」。水の山パートナーと市内にある3つの高校(山梨県立北杜高等学校、北杜市立甲陵高等学校、学校法人帝京大学第三高等学校)がタッグを組み、サステナブルなまちを考える斬新な取り組みだ。
11月15日、3回目のプロジェクト活動として2回目の企業視察が行われ、「水の山」パートナー企業のうち5社6か所【株式会社アルソア慧央グループ、株式会社シャトレーゼホールディングス、サントリー食品インターナショナル株式会社 萌木の村株式会社 北杜市農業企業コンソーシアム(NXアグリグロウ株式会社、株式会社明野九州屋ファーム)】を、総勢85名の高校生が視察した。

NXアグリグロウ-全景NXアグリグロウ-高校生の企業訪問風景01

北杜の水で野菜を育てるNXアグリグロウ

NXアグリグロウは、日本を代表する物流会社「NX日本通運」のグループ会社であり、NXグループの新規事業として、6年ほど前にスタートした農業法人。新しい領域への挑戦と、経済への貢献を目指し、水耕栽培による農業を展開している。
創業の地に北杜市に選んだ理由について、諸井奈美社長は、
1)国内最長級の日照時間
2)主な販売先である首都圏までトラックで約2時間半というアクセスの良さ
3)南アルプスのきれいな地下水
4)夏が比較的涼しく、冬に積雪がない気候
5)山梨県と北杜市の農業参入企業の受け入れ実績が豊富なこと、
6)企業の受け入れに対する住民の理解が得やすいこと
という6点を挙げた上で、
「加えて、働き手の確保を考えた場合に、移住者が多く、多様な人材を確保しやすいということにも魅力を感じました」と話す。
NXアグリグロウ-諸井奈美社長

今回見学した北杜農場は、サッカー場の1.5倍にあたる11,000平方メートルの温室。土はほとんど使わず、くみ上げた地下水に野菜が成長するのに必要な養分を加えた特別な水を循環させながら、ホウレンソウ、ルッコラ、春菊、そしてパクチーという4種類の葉物野菜を栽培している。
農場内に入ると、人間の腰くらいの高さの台の上に整然と葉物野菜が並んでいる。高校生も、従来の農場のイメージとはかなり違う光景に興味を持った様子だ。
「この農場では、それぞれの野菜が必要な養分を十分に吸い込めるよう、野菜の根っこを直接養液に浸しています。くみ上げた地下水に、野菜が成長するために必要な窒素、リン酸、カリウムが入った2種類の液体肥料を適切な比率で水と混ぜ合わせて作ります。そして、それを循環させながら、野菜が吸って足りなくなった分だけ養液が追加される仕組みになっています。
そのため、一見大量の水を使っているように見えますが、実際には通常の農業よりもかなり少ない水で野菜を育てることができています。また、ここで作っている野菜は、えぐみや苦みが少なく、軽く洗えば、茹でずに生でサラダとして食べていただけるのですが、そのために重要なのが、水。花崗岩層を20年もの時間をかけて浸透し、その過程で苦みやえぐみの元となる成分が削がれた南アルプスの天然水だから、すっきりとした味わいの野菜が作れるんです。」
社員の前田さんの説明を、真剣な表情で聞く高校生たち。

「ずっと養液の中に浸していて、根は腐らないのですか?」
「植物なので二酸化炭素が必要になると思うのですが、二酸化炭素の濃度調整もしているのですか?」
「太陽光を取り入れているということですが、天気が悪いときはどうするんですか?」

などといった質問も飛び出した。

NXアグリグロウ-農場風景01NXアグリグロウ-生産商品NXアグリグロウ-高校生企業訪問-説明風景01NXアグリグロウ-高校生企業訪問-説明風景02

高齢者や女性も働きやすい職場環境を体験

NXアグリグロウの特徴はその職場環境にもある。施設内を案内しながら、前田さんが説明する。
「農場は腰の高さにあり立ったまま作業ができますし、葉物野菜は軽くて扱いやすく、重量物の運搬や高所作業はほとんどありません。高齢者や女性にも無理のない仕事なので、勤務日数や勤務時間を柔軟にし、それぞれの事情や状況に合わせて働いてもらえるようにしています。現在、約70名のパート職員に働いてもらっているのですが、その38%が65歳以上、62%が女性なんですよ。」
実際に、施設内ではイキイキと働く多くの女性や高齢者の姿が見られる。高校生たちは、そこにも興味を持った様子だった。その後、農園に戻り、作業体験が始まった。
今回体験したのは春菊の定植作業。高校生は、腰の高さの定植パネルの前に並び、育苗室で育てられた3cmほどの苗を、一つひとつ摘まみ上げて植穴に落とし込んでいく。定植パネルはいわば畑。そのまま栽培されるため、茎や葉、根っこを傷つけないことが大切だ。
最初は恐る恐る触っていた高校生たちだったが、すぐにコツがつかめたよう。リズミカルに作業が進み、予定された作業量は短時間で終了した。

NXアグリグロウ-高校生企業訪問-説明風景03NXアグリグロウ-高校生企業訪問-説明風景04NXアグリグロウ-高校生企業訪問-説明風景05NXアグリグロウ-高校生企業訪問-説明風景06

諸井社長「皆さん、お疲れさまでした。定植もありがとうございます。すごくスピードが速くてびっくりしました。上手に植えてもらったのでこのまま育てていきます。
さて、私たちは、地元北杜市の住民の方々と何かコラボレーションしながら、この地域の発展に貢献していけたらなと思っていますので、何かあればご相談いただけたらと思います。皆さんの若い力で、ぜひこの地域を盛り上げていってください。
それから、今日体験したことは、ぜひ、ご家庭で、ご家族の方々に紹介していただけたらと思います。今日皆さんに植えていただいた野菜は、12月の下旬に店頭に並ぶ予定です。県内のスーパーにも並びますので、食べてもらえたら嬉しいです。」

NXアグリグロウ-高校生企業訪問-春菊の定植作業NXアグリグロウ-高校生企業訪問-春菊の定植作業01NXアグリグロウ-高校生企業訪問-春菊の定植作業02NXアグリグロウ-高校生企業訪問-春菊の定植作業03

活動を終えて…

「僕の家は農家ですが、従来型の土を使った農業をしているので、こういった形の農業に触れるのは今回が初めてでした。水と栄養分だけで野菜を育てるというのはおもしろいと思ったし、システムなど興味深いところもたくさんありました。施設内を見学するだけでなく、定植体験ができたことも良かったです。すごく良い経験でしたし、農業に対する新しい視点を得ることができたように思います。また、少子高齢化という社会のなかで、高齢の方にも優しい環境を作り働いてもらっているという点にも興味を持ちました。すごく良いことだと思います。」

「農業に触れる機会は今までなかったので、野菜は食べる専門でした。でも、今日こうして施設を見学し、作業を体験させてもらって、僕らが普段食べている野菜には、育てるためのいろんな工夫や技術があることがわかり、たくさんの人が関わって作られていることも実感しました。こういう経験をしたからには、残さずきれいに、美味しく食べたいと思います。」

「私は農業関係の仕事に興味がなく、自分から積極的に関わることはありませんでした。今日は、自分からはあまりやらないことを経験させてもらえたので、とても良い機会になりました。農場を見学させてもらい、実際に作業を体験してみたことで、農業に対して考えるきっかけとなりました。」

「僕は北杜市に住んでいるので、こういうハウスは日常的に目にしているんですが、中を見せてもらえる機会や、実際に作業をする機会はないので、今日は参加してよかったと思います。探究活動では、北杜市の人口問題を解決するために北杜の水を使って何かできないかと考えていて、働く場所をどうするかということが一つの課題だと思っていたのですが、今日はいろんな方が働いている姿を見せてもらって、通常の農業は難しい人も、こういう仕事なら関われるのかなと思いました。」

「これまで農業に関わってこなかったので、最新の技術を見て感じることができたのは良かったです。それに、高齢の方でも働けるように、働き方にも工夫があるのは素晴らしいと思います。実際に春菊を定植する作業を体験させてもらったのですが、立ったままできるので楽だったし、洋服や手が汚れることもないので、これなら無理なくできるなと納得しました。」

「北杜市に住んでいるので市内に農業法人がいくつもあることは知っていましたが、そもそも農業に興味がなく、企業のことも詳しく知らないままできました。今日、土を使わない農業を初めて知って、水だけで野菜を育てているなんてすごいなと思いましたし、思いもよらないような工夫がいろいろとされていることにも驚きました。こういう企業が自分のまちにあると知って、ちょっと誇らしい気持ちになりましたし、北杜市の取り組みでこういう企業があることも、いいなと思いました。
私は、北杜市の水の使い方を探究のテーマにしています。天然水も限りある資源なので、節水できたらいいなと思っていろいろ考えているのですが、NXアグリグロウでは、地下水を循環させ、通常の露地栽培よりも少ない量の水で野菜を育てているということを聞き、探究のヒントにしたいと思いました。」

最新の農業に触れ、農業に対するイメージが少し変わった様子の高校生たち。柔軟な学びの姿勢によって、それぞれ新たな知見を得ることができたようだ。
次はいよいよ発表会。どんなアイデアが生まれるのか、ますます楽しみになった。


NXアグリグロウ-高校生企業訪問-感想01NXアグリグロウ-高校生企業訪問-感想02NXアグリグロウ-高校生企業訪問

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