ミズくまくん

世界に誇る「水の山」プロジェクト ABOUT "MIZUNOYAMA" PROJECT

ミズくまくん

「水の山」コラム

#012 高校生×水の山パートナー企業

高校生と「水と暮らすサステナブルなまち 北杜市」を考える。

世界に誇る「水の山」ユースアイデアプロジェクトは、水の山パートナー企業(サントリー食品インターナショナル株式会社、山梨銘醸株式会社、金精軒製菓株式会社、北杜市農業企業コンソーシアム、萌木の村株式会社、株式会社アルソア慧央グループ、株式会社シャトレーゼホールディングス)と市内にある3つの高校(山梨県立北杜高等学校・北杜市立甲陵高等学校・学校法人帝京大学帝京第三高等学校)が連携して、高校生が、自分たちのまちについてよく知り考える機会を創出し、北杜市へのシビックプライドの醸成と持続可能なまちづくりの必要性を共に考えて行こうという取り組みだ。特色の違う3校が垣根を越え「水」をテーマに探究するこの取り組みはとてもユニークだ。これまでに、3回にわたって水の山パートナー企業による講演や企業視察が行われ、並行して、各高校で日々の授業の一環として、生徒自身がテーマを決め、探究活動を行ってきた。
水の山ユースアイディアプロジェクト報告会-開始前の様子zoomで参加の帝京第三高校

2024年3月18日、その集大成となる三校合同発表交流会が開催された。
会場となった北杜高校には、活動に参加した高校生238名(北杜高校1年生178名 甲陵高校2年生12名、帝京第三高校48名※発表者以外はリモート参加)が集まり、開始前から熱気に包まれた。
始業のチャイムを合図に、北杜市長と観光や教育などの専門家5名の評者を迎えての、各校代表による発表が始まった。
水の山ユースアイディアプロジェクト報告会-ゲストの紹介

評者

以下、左側より順番に
北杜市長 上村英司(以下、上村市長)
水の山パートナー企業 北杜市農業企業コンソーシアム会長 藤巻眞史 氏(以下、藤巻氏)
山梨県立北杜高校 校長 河手由美香 氏(以下、河手氏)
吉本興業所属 山梨県住みます芸人 いしいそうたろう 氏(以下、いしい氏)
公益社団法人やまなし観光推進機構 事務局長 中村洋一 氏(以下、中村氏)
環境省南アルプス自然保護官事務所 国立公園保護管理企画官 藤田和也 氏(以下、藤田氏)

水の山ユースアイディアプロジェクト報告会-プレゼンの様子(甲陵)

市立甲陵高等学校「北杜市の観光について考える」

これまでの水の山パートナー企業の取り組みを見たうえで「北杜市の観光客を増加させたい」「北杜市の魅力をもっと知ってほしい」「SNSでの宣伝の有効性を検討」という3つの目的を掲げ、仮説を立て、市内約10箇所の観光地でシールアンケート(※1)を実施。その結果の考察から直接話しかける街頭インタビューのスタイルで再度アンケート調査を行い、「人口が多くアクセスも良い南関東圏へアプローチする」「より多くの世代に伝えるため、広報活動にはアナログ、デジタルの双方を活用する」「時間的・経済的余裕のある40~50代のリピーターを増やすことが重要」「子育て世代へ、自然と触れ合える、キャンプなどアクティビティが楽しめるといった、北杜ならではの水の魅力を伝える」という結論を導き出した。

(※1)シールアンケート…回答者が用意されたシールを選択肢に貼り付ける形式のアンケート手法

水の山ユースアイディアプロジェクト報告会-プレゼンの様子(甲陵)

寸評

シールアンケートは総数21,457件、街頭インタビューでも210件もの回答を得たということで、信用できる結果だと思います。我々、観光に携わる者にとってリピーター率の向上や、来訪者にどうやって感動してもらうかということは大きな課題です。今回の取り組みでそこに気づいていただいたので、これをヒントに、さらに研究を深めていっていただけたらと思います。(中村氏)

アンケート手法や研究の手法が大変素晴らしく、今後北杜市の政策に対して大きなヒントになるのではないかと思います。
地域によって個性があり、魅力が違います。単なる自然だけでなく、水は人々の生活にとって大変重要なインフラでもあるので、地域の人々の歴史、文化、伝統、芸能などと結びつけて魅力を再発見していくという視点もあるということをヒントにしてみてください。また、研究は、これまで誰も立てたことのない「問い」を立てることから始まります。常に問題意識を持ち、疑問を持つ。そのためには、自分を異文化に置いてみることが大切で、対象者の立場になってみると、相手が何を考えているのか、何を欲しているのかといったことが想像でき、何をアピールすればいいのかが見えてくるように思います。それから、物事には光があれば影もある。影の部分にも目を向けながら、そことの対比で物事を考えていくことで、オリジナルの問いを立てることができるのではないかと思います。
大変素晴らしい研究なので、さらに深め発展させていっていただけたらと思います。(河手氏)

水の山ユースアイディアプロジェクト報告会-プレゼンの様子(甲陵-質疑応答)水の山ユースアイディアプロジェクト報告会-プレゼンの様子(甲陵-質疑応答)

私立帝京第三高校「ウォーターレジャーアクティビティ型リゾートの展開」

コロナ禍の影響も含めた近年の市場動向と需要を分析し、アウトドアレジャーアクティビティは、北杜市の魅力を活かし経済効果を創出する有効なビジネスであると結論付けた上で、山、川、森といった自然や満点の星空などの自然景観、ニジマスのつかみ取りや流しそうめんなど水資源を活用した体験メニュー、地元食材のレストラン、天然温泉やサウナなどが楽しめるレジャーアクティビティ施設の設置を提案。オンライン広告やSNSを活用した広告展開や、施工計画、経営、ステップアップの3段階からなる今後の計画を示した。

水の山ユースアイディアプロジェクト報告会-プレゼンの様子(帝京第三高校)水の山ユースアイディアプロジェクト報告会-プレゼン時の様子(帝京第三高校)

寸評

こんなレジャー施設が山梨にあったら行きたいなとワクワクしながら聞いていました。こういう施設を北杜市の自然の中に作るという発想がいいなと思います。一方で、料金はどうなるんだろう、家族で行くとなるとかなり高くなるんじゃないかなという心配もあるので、そういったいわゆる影の部分も踏まえて考えていただけると良いのかなと思います。(いしい氏)

プレゼン資料がよくできていて、うちの会社で採用したいと思うくらいでした。また、アイデア自体はおもしろく、これを作れば、一時的にはすごい人気になって経済効果もあるでしょう。ただ、継続していけるかどうか、この地域全体がボトムアップしていけるかどうか、「水の山」が日本に、世界に広がっていけるかどうかといったことを考えると、疑問を持ちました。人工物ではなく、自然のものすでにあるものをうまく使ったアクティビティが必要なのではないかと思います。今回は施設を作ることを前提にアイデアを考えてくれましたが、この北杜市にさらなる施設は必要なのかという視点も大切にしてほしいなと思います。(藤巻氏)

水の山ユースアイディアプロジェクト報告会-プレゼンの様子(帝京第三高校-質疑応答)水の山ユースアイディアプロジェクト報告会-プレゼンの様子

県立北杜高校 「北杜の水をきれいに保つには?」

今回のプロジェクトで実施された水の山パートナー企業の視察を通して、「北杜市には名水がある」「それぞれの企業が名水を活用すると共に、保全活動にも取り組んでいる」と学んだことから、このかけがえのない水をきれいに保つために自分たちができることを考え、家庭の台所で出る生活雑排水に注目。それぞれの家庭でできる生活雑排水を出さない工夫を考え、それを伝え意識改善につなげるための「周辺地域の人を対象とした料理教室」の実施を提案。廃校となった旧北杜市立高根清里小学校の調理室を使うなど具体的な実施計画を立案した上で、「ベジブロス」を活用するなどフードロスを削減した調理を実践したことも報告した。

水の山ユースアイディアプロジェクト報告会-プレゼンの様子(北杜高校)水の山ユースアイディアプロジェクト報告会-プレゼン時の様子(北杜高校)

寸評

私は自然を守るという仕事をしており、日ごろから、普段の生活の中で自然を守るという意識がとても大事だと思っています。今回のプロジェクトで、自分たちの日々の生活の中で水を守るためにできることがあると気づき、一人ひとりが行動し始めているということは素晴らしいと思いますし、ぜひ続けてほしいと思います。また、「すべての人が家庭での生活雑排水などに目を向け、改善しようとする意識が大切」という研究のまとめを、ぜひ、周囲のいろんな人にも伝えていってほしいと思います。(藤田氏)

実は、地球上にある飲める水って、とっても少ないんです。その貴重な水が、北杜ではたくさん生まれているんですね。今回のプロジェクトを通してその事実を知ったみなさんが、それを未来につなげるために、自分の半径2m圏内でできることがたくさんあると教えてくれた。僕にとっても新鮮でした。ぜひやっていこうと思います。ありがとうございました。(いしい氏)

水質汚染に目を付けたということは素晴らしい視点だなと思いました。私たちは水が湧き出る場所に住んでいます。ここから流れてたくさんの人のところへ行くわけですよね。だからこそ、私たちが水を汚さずに流していくということが大切で、そのために一人ひとりができることを考えてくださったことが良いと思いました。それから、フードロスを減らすための料理教室は、地元のレストランや食品企業とコラボレーションできそうですね。そんな展開も期待しています。(萌木の村 五味氏)

水の山ユースアイディアプロジェクト報告会-プレゼンの様子(質疑応答-北杜高校)水の山ユースアイディアプロジェクト報告会-プレゼン時の様子(北杜高校)水の山ユースアイディアプロジェクト報告会-プレゼンの様子(質疑応答-北杜高校)

3校代表者による発表が終わった後には、上村市長による全体講評が述べられた。

北杜市長 上村英司

講評 北杜市長 上村英司

甲陵高校、帝京第三高校の、水と観光を結び付けての発表を聞き、水は多くの方を惹きつける魅力的な要素であることを改めて認識しました。今後、観光資源として活用していきたいと思います。また、北杜高校には身近な保全活動を提案していただき、一見きれいに見える水でもさまざまな要因で汚染が進む危険もあることを再認識し、これからもしっかりと保全し、将来にわたってきれいな水を提供できるようにしていかなければと決意を新たにしたところです。
今回、水の山パートナー企業のみなさんと一緒にこのプロジェクトを通して北杜の一端を知っていただきましたので、これから、北杜の水や北杜のことをより知っていただき、ますますこのまちに関心を持っていただけたらと思います。そして、将来にわたって北杜市と長く関わっていただけたらありがたいなと思います。北杜の水を積極的に発信していくことが私たちの使命だと思っておりますので、みなさんと一緒にそれを成し遂げて行けたらとも思います。

水の山ユースアイディアプロジェクト報告会-修了証授与水の山ユースアイディアプロジェクト報告会-プレゼン参加者・ゲスト集合写真

その後、上村市長より、3校の代表者へ修了証の授与が行われ、盛況のうちに三校合同発表交流会は終了した。

プロジェクトを終えて

参加生徒

1年間の活動を通して、北杜の水の素晴らしさについて共有できたことを嬉しく思います。僕は長野県の出身でこれまで北杜市には馴染みがなかったのですが、活動を通して理解が進むにつれ、愛着を感じるようになりました。
今回のプロジェクトでは、企業視察やいろいろな世代の方と意見交換する機会などが得られました。また、今日の発表会でも、北杜高校の校長先生の「影の部分を見てみよう」とか、市長の「市に愛着を持ってほしい」といった言葉が刺さりました。自分にない新しい意見や考え方を取り入れることができたので、今後の人生に役立てて行けたらと思います。(甲陵高校 男子生徒)

今回のプロジェクトでは、水に対するさまざまな企業努力を学ぶことができましたし、グループのメンバー3人で協力し、情報を探したり、どんなことをしたら人がいっぱい来てくれるだろうかとアイデアを出し合って話し合ったりして、プランを完成させることができました。北杜の良さを表現できる、北杜市ならではのアクティビティを考えることは難しかったのですが、なぜ北杜市にレジャーアクティビティを作るのか、他の県ではだめなのかといったことをよく考えながら、北杜の良さを感じられるようにとプランを練ってきました。今後は、さらにいろいろなことに興味を持ち、実際にその場所へ行っていろんなことを感じて、考えを深めていきたいと思います。(帝京第三高校 男子生徒)

私は甲斐市に住んでいて、北杜市は田舎で何もないと感じていました。ですが、このプロジェクトを通して、北杜市の最大の魅力である自然が豊かなところや、水がきれいでおいしいことに気づくなど、北杜市の魅力についてよく知ることができました。
また、私はベジブロスを知りませんでしたが、探究活動を通して、ベジブロスは、手軽に作れて野菜を無駄なく使うことができ、生活雑排水を出さないといったエコなポイントもあると知りました、今日は、生活雑排水を出さないために家庭でできる工夫を多くの人に伝えることができて良かったです。今日聞いてくれたみなさんが、家庭で実際に行ってそれを習慣化できたら、他の人にも伝わっていくと思うので、ぜひやってほしいと思います。そして、それが北杜市の魅力である名水を永遠に守ることにつながっていくように思います。(北杜高校 女子生徒)

水の山ユースアイディアプロジェクト報告会-プレゼンの様子水の山ユースアイディアプロジェクト報告会-プレゼンの様子

評者


3校それぞれ特徴があり、高校生の視点で考えていただいた発表を聞くことができました。
私の立場からは、北杜高校の発表が最も関係が深いのですが、フードロスとも絡めながら水質汚染を防ぐために普段の生活のなかでできることをやるという、非常に良く考えられた内容になっていたと思います。
高校生に水質を守る、環境を守ることに関心を持ってもらうことは、とても重要なこと。地域のことを改めて知るきっかけになり、そこから地域への愛着が生まれて、より地域のことを考えることやいろいろな活動にもつながっていくと思いますので、とても貴重なプロジェクトだったと思います。(藤田氏)

今回のプロジェクトは、高校生はポテンシャルを持っていて、本気で頑張ってまちのため、地域のために尽くしているかっこいい大人たちとの出会いが、彼らのポテンシャルを開いていくということを改めて感じる、素晴らしい機会になりました。簡単に情報が手に入る世の中ですが、自分の目で見て五感で感じて、リアルな体験をしていくということが重要なのだと、この1年間の生徒の成長を目の当たりにして改めて思います。今後も学校として、地域の本気で頑張っている大人たちと子どもたちをつなぐことを、市と協力しながら、企業のお力もお借りしながら、継続してやっていけたらと思います。(河手氏)

今日の発表を聞き、個人的には、この3校がプロジェクトを組んで、甲陵高校がマーケティング、北杜高校が企画立案、そして帝京第三高校が実施計画を担当すると、この地域の宝になるような大きなプロジェクトが誕生するんじゃないかという期待が膨らみました。市内の3つの高校が集まって、同じテーマで議論したり研究をしたりするというのはすごいことだと改めて感じています。また、今回は地域の「水」がテーマなので、日ごろ何気なく使っている水がこんなに大切なものなのだということを実感してもらえたと思うし、企業視察などを通して産業との結びつきを理解してもらえたのも良かったと思います。
今回のプロジェクトを通して体験したり探究したりしたことが、いつかここへ戻ってくる一つのきっかけになるだろうと期待しています。また、我々水の山パートナー企業は、いつでも受け入れ、一緒にやっていくというスタンスでいますので、今後もこうしたチャンスを作っていってほしいと思います。(藤巻氏)

水の山ユースアイディアプロジェクト報告会-プレゼン時の審査員の様子北杜市農業コンソーシアム藤巻代表

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