管理者・ケアマネジャー 清水 毅(しみず つよし)さん
看護小規模多機能型居宅介護事業所 きよさとの家
将来性を感じて、周囲の反対を押し切り介護職に
私は、平成6年4月に、社会福祉法人緑樹会の、特別養護老人ホーム明山荘に入職しました。もう30年近く前になります。介護職に就こうと思ったきっかけは、高校2年生のとき。これから先高齢化がだんだんと進んでいくのではないかという話がちらほら聞こえて来て、将来性を感じました。閉鎖的な地区の出身だったこともあって、両親からも周囲からも良い顔をされませんでしたが、私は、反対されると燃え上がるタイプ。高校卒業後に介護関連の専門学校へ進み、介護福祉士の資格を取得して入職しました。
当時は男性の介護士は本当に珍しくて、私が入職した時も、男性の介護士は4名のみ。女性が担う仕事という認識が強く、専門課程を学んでからこの職に就くという人も少なかったですね。
平成10年に知的障がい者の「グリーンヒルホーム」へ異動し、平成16年に「特別養護老人ホーム明山荘」に戻って、平成27年には新たにオープンする「明山荘小規模多機能型居宅介護事業所」へ。その後、令和2年からこちらに勤務しています。おかげさまでいろんな経験をさせてもらい、仕事の幅も広がっています。
大切にしているのは、利用者さんの想い
利用者の想いと、それを先延ばしにしないことを大切にしています。
これまでいろんなことをしてきましたが、例えば、「最期に何かやりたい」とおっしゃる方に、思い出の地を巡るという企画を提案して、リクライニング車いすでいくつかの場所を回り、最後にご自宅でご家族とご対面をしたことがありました。その方は、2~3日後にお亡くなりになったのですが、とても喜んでいただけました。また、在宅酸素をつけている方は本来火気厳禁なのですが、ご家族とも話し合い、ミニ花火大会をこの施設の庭でやったこともありました。実は私、煙火打ち上げ従事者という資格を持っているので、家族と花火を見たいという利用者さんの希望を叶えることができました。
私は、利用者さんから何かしらの要望があったときには全力で答えたいと思っていて、日々の介護サービスの一環として、こうしたサービスも提供させていただいています。ありがたいことにスタッフもみな前向きで、「やっちゃおうよ」と。否定的な意見はまず出てきませんね。
今も続く、入職当時の決意
私が、利用者さんの気持ちに寄り添う介護を志すようになったのは、入職した当時の、ある男性の利用者さんとのやり取りがきっかけです。「瑞牆山を見たい」とおっしゃったのですが、当時の私は入ったばかりということもあって対応できずにいたところ、1週間ほど後に亡くなられてしまった。ものすごく後悔して、利用者さんがしたいことは、すぐにやらないといけない。明日がどうなるかなんて誰にも分らないんだから、「またあとでね」なんて言っている場合じゃないと、強く思ったんですね。それで、それからはすぐにやろうと決めたのですが、当時は、制度的に制約があり、私が男性だということもネックになって、利用者さんに寄り添うということがなかなか難しく、ジレンマを感じました。
今も、利用者さんも、私たちも、明日の保証はないんだから、絶対に先送りにはしない。今できることを最大限やっていくということが私の信念になっています。
仲間の存在に支えられ、多岐にわたって精力的に活動中
この30年、いろいろなことがありましたが、なかでも嫌だったのが、計画を立てて実行するまでに時間がかかること。あるとき、利用者さんが「お花見に行きたい」とおっしゃるので叶えようとしたら、起案してから決裁が下りるまで1か月かかって桜が散ってしまったんです。いじわるをしたとかではなくて、ルール通りにやったら、時期を逃してしまったと。一般的な組織ではよくあることなのですが、そういうのは本当に嫌ですね。
一方で、嬉しかったのが仲間の存在です。最初は孤軍奮闘でしたが、諦めず続けていたら、仲間が集まってきました。同じ思いを抱く仲間。私の場合は、利用者さんの心情に寄り添いたいというスタッフですね。それがモチベーションになって、また諦めずに続けていける。その延長線上に今の自分があると思っています。
それから、アンテナを高くして、いろんなことに興味を持つということも、大事なのかなと思います。アンテナを高くしていると、いろんな取り組みの例にも気づく。良さそうだと思ったら、仲間と共有してやってみる。それで実際に良い結果が出たら、自分たちの事業所以外にも広げていく。おかげで、山梨県障がい者スポーツ協会の役員や、山梨県介護支援専門員協会の支部理事、北杜市のボランティア団体「チームオレンジ月見草」の代表など、いろいろとやらせてもらっています。
また、なかなか福祉に対するイメージが良くないので、「楽しいよ、現場ではこんなことができるよ」という生の声を伝えたくて、北杜高校のライフデザイン科と優和福祉専門学校で、外部講師も務めています。介護の仕事がしたいと相談に来る子がいたり、介護職には就かないまでも高齢者に対する接し方を意欲的に学んでくれたりと、一定の手ごたえを感じています。一般住民向けの講座も、公民館単位でやっていますし、ボランティア団体から、認知症の人に対する接し方がわからないといった相談を受けてお話させていただくこともありますね。
誰もが地域で輝ける北杜市を目指して
介護の仕事は、人間の最後をいかにエンディングできるかという仕事。利用者さんが、悔いのないように、やりたいことをやれるようにお手伝いをして、お見送りするという仕事です。そこが、一番のモチベーションであり、やりがいですね。その結果、利用者さんから、「ありがとう」と声をかけられたり、ご家族から感謝の気持ちを何らかの形でもらったり…。チームとして誰かの想いを叶えるところにも、大きな魅力を感じています。
今回、優良職員表彰をいただき、これまでの活動が認められたのかなと大変嬉しく思うと同時に、身の引き締まる思いもしています。今後、北杜市の介護事業所が、元気で、なおかつ、利用者さんに寄り添える事業所になっていくことが理想です。そのためにも、緑樹会でやってきたことを地域に広げていくとともに、高齢者だけでなく障がいのある方にも広げて、誰もが地域で輝ける北杜市を作っていけたらと思っています。
看護小規模多機能型居宅介護事業所 きよさとの家
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