ミズくまくん

世界に誇る「水の山」プロジェクト ABOUT "MIZUNOYAMA" PROJECT

ミズくまくん

「水の山」コラム

#003 山梨銘醸 七賢

名水あるところに名酒あり。伝統と革新が同居した日本酒造り。

成分のおよそ8割が水という日本酒。そのおいしさの真髄はやはり水にある。北杜市白州町で唯一の酒蔵として知られる七賢は、創業1750(寛延3)年、長野県で酒造業を営んでいた本家の7代目が白州の水の良さに注目し、甲州街道台ヶ原の地で分家として始めた老舗だ。
現在は13代目が伝統を踏襲しながらも新しい挑戦を続け、日本酒と発酵文化を伝えている。白州の水だからこそ生まれるフレッシュな味わい。稀少な日本酒を求めて酒蔵を訪ねた。

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「白州の水をいかに酒に表現していくか。この環境を最大限に生かした酒造りをしたいんです」。そう語るのは、北杜市白州町に唯一ある酒蔵、七賢の醸造責任者を務める北原亮庫さん。
300年近く続く歴史と伝統を誇る酒蔵を、現在の社長である父、北原兵庫さんのもと、営業を担当する専務取締役の兄、北原対馬さんとともに守っている。

七賢の酒は南アルプス甲斐駒ヶ岳の伏流水が仕込み水になっており、酒蔵の敷地内にある大きな井戸から天然水を汲み、長年酒造りに使用してきた。この地で生まれ育った亮庫さんにとって、幼いころから水がおいしいのは当たり前のこと。
だが、酒造りに関わるようになってつくづく、この土地の水の素晴らしさを理解できるようになったという。「以前は、水のおいしさをわかっていても、酒に使った場合どんな特徴が出るのか見えてこなかった。今ではそれが明快にわかるので、白州の水を生かした酒造りができるようになったと自負しています」

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酒造りは水と酵母の相性によるところが大きい。口に含んだときの潤い、瑞々しさ、爽やかさ、軽快さが感じられること。飲んだ時に気持ち良く喉を通り抜けていく心地よさ。この味わいこそが白州の水を使った七賢の日本酒の真骨頂だ。

連綿と続いてきた酒造りの一方で、後継した亮庫さんが対峙したのは長年踏襲されてきた醸造方法。水の特性がわかった今は、伝統を継承しながらも醸造責任者としてのビジョンを織り交ぜていく。

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「日本酒は搾った後に熟成期間というものがあり、そこで味の調和を保っています。そうすると旨味がのってくる。芳醇な酒はおいしいけど、僕の中で白州の水を使うイメージとはちょっと違うと思ったんです。だからできたら長期間寝かせず、すぐ瓶に詰める。それによりフレッシュなタイプが生まれました」

これまでは1年ほど寝かして瓶詰めして出荷していたが、今では熟成期間を3ヶ月から半年ほどに縮めた。フレッシュな酒だけに絞り込んだ理由は?という問いに亮庫さんはきっぱりとこう話す。
「『七賢の酒はどんな味?』と聞かれた時に『これです』と一言で明確に言いたかった。今まではいろいろな味があったので、何が七賢らしさなのかと問われたときに印象が弱くなってしまうと思って。白州の名水を生かした酒造りに特化した結果です」

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醸造以外でも既成概念にとらわれず、新しい感覚を取り入れ、アイデアを具現化していく。「ここ数年で地元米をどんどん増やしました。今では全体の80%が山梨県産米です。そのうち北杜市は全体の50%を占める。田んぼに旗を掲げているのは、どこの米を使っているのかアピールしたくて」。
他にもラベルやパッケージのリニューアル、カフェの併設、糀を取り入れた食のすすめ、香りを感じやすいワイングラスでのテイスティングなどを提案。日本酒での乾杯ができるようスパークリングも販売している。

「まずは、できるところからですけどね」と笑う亮庫さん。伝統を守りながら、新たな時代のエッセンスを随所に取り入れていく、その手法は幅広い年齢層に日本酒の魅力を伝えるための環境づくりにも見て取れる。そして一時の流行やブームで終わることのないよう、将来を見据えた長期的な取り組みでもある。
「南アルプス水系の白州の水を使った日本酒は世界でうちしかないですから」。アイデアは軽やかに、酒造りは着実に。亮庫さんの挑戦は高い志とともに、これからも続いていく。

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山梨銘醸 七賢

住所
山梨県北杜市白州町台ヶ原2283
電話番号
0551-35-2236
定休日
元日
営業時間
9:30~17:00(10月~3月は16:30まで)※直営店営業時間
URL
http://www.sake-shichiken.co.jp/