ミズくまくん

世界に誇る「水の山」プロジェクト ABOUT "MIZUNOYAMA" PROJECT

ミズくまくん

「水の山」コラム

#009 高校生×水の山パートナー

世界に誇る「水の山」ユースアイデアプロジェクト発進!

コロナ禍も落ち着いた今春、新たな取り組みが始まった。「世界に誇る『水の山』ユースアイデアプロジェクト」。北杜市内で水資源の保全活動を積極的に行う「水の山」パートナー企業7社と、北杜市内にある3つの高校(山梨県立北杜高等学校、学校法人帝京大学帝京第三高等学校、北杜市立甲陵高等学校)が連携して行う斬新な取り組みだ。

ユースアイデアプロジェクトとは?

市内で学ぶ高校生に、地域の特徴である水や自然環境について知る機会や地域の未来を考える機会を提供し、シビックプライドの醸成と持続可能な地域づくりの必要性の浸透をはかるとともに、それを通して、「水と暮らすサステナブルなまち 北杜市」のブランド価値の構築も目指すという。

プロジェクトに参加する生徒は、個人またはグループで「水」に関するテーマを設定し、目的の達成や課題解決に向けた探究活動を8か月かけて行っていく。各高校との連携のもと、プロジェクト活動は正式な授業である『総合的な探究の時間』のなかで行われ、単位認定もされる。高校生がパートナー企業を訪れて、各社の取り組みを見学したり体験したりする機会に加え、探究の過程で生じた疑問や課題についても、パートナー企業に相談することができる。
さらに、そうして得た経験や知識から成果をまとめ、来年2月下旬の合同発表会で発表するほか、各種ビジネスコンテストなどへも応募し、より広く全国に向けて北杜市の水の良さやブランド価値を発信していくという。

「普段飲んでいる水が実は名水であり、その水があるから多くの企業が北杜市で企業活動をしているということを、生徒たちはほとんど認識していません。今回のプロジェクトは、自分たちが暮らすまちに素晴らしい水があるということを深く知る良い機会になりますし、企業で働く方々と実際にお会いし、その取り組みを見たり体験したりする機会も、貴重な学びになるでしょう。そうした経験を踏まえ、生徒たちが自分なりの視点を持って地域に還元できる研究ができたらいいなと思っています」(甲陵高校教諭)。

「今の時代の若者たち、特に高校生は、意識が高く、社会のためになるソーシャルグッドな行いをしたいと真摯に考えている世代なので、彼らが、私たちの製品や活動に対してどのように感じるのか、非常に興味があります。今回は高校生と直接交流できるので、彼らの反応が楽しみですし、そうしたことについて対話するのも楽しみです」(萌木の村株式会社)

「世代が違うと、例えば情報発信など『こういう届け方もあるんだ』と、こちらが勉強になることもあるので、高校生との交流は楽しみですね。柔軟な発想や新たな視点から意見をもらい、将来的に一緒に何か新しい商品などが開発できたらいいなと思っています」(金精軒製菓株式会社)
高校からもパートナー企業からも期待の声が寄せられている。

水の山ユースアイデアプロジェクト第1回-01水の山ユースアイデアプロジェクト第1回-02

高校生、パートナー企業が一同に会し、キックオフイベントを開催

2023年6月1日、第1回ユースアイデアプロジェクトが開催された。会場となった北杜高校に集まったのは、北杜高校1年生184名、甲陵高校2年生12名と、パートナー企業7社。加えてマスコミも多数訪れ、参加者は250名ほどに。帝京第三高校の1年生47名は、リモートでの参加となった。

北杜市によるプロジェクト概要の説明に始まり、続くパートナー各社からの企業紹介では、それぞれの企業の「水」とのかかわり、実際に行っている水資源の保全活動や、第2回、第3回のプロジェクトで予定されている企業視察の内容についてのプレゼンテーションが行われた。自分たちの企業活動に最適な水を探し求めた結果、北杜市を活動の場に選んだサントリー、山梨銘醸、シャトレーゼ。金精軒製菓や萌木の村の、北杜の水があったからこそ実現した商品開発。アルソア慧央グループは、水を含めた自然の力を求めて東京から本社を移転したと話す。どの企業も、水や自然環境との深いかかわりとそれに寄せる思いが伝わってくる内容だった。また、北杜市農業コンソーシアムからは、高校生のアイデアを求めるアグリアイデアプロジェクトの立ち上げも発表された。

休憩を挟み、後半最初のプログラムは学校紹介。各校2名の代表者が登壇し、自分たちの学校についてユーモアを交えながら自分たちの言葉で語り、その魅力を活き活きと伝えた。

そして最後は、サントリーによる水の山セミナー。サントリーが全国で展開している「天然水の森」活動の紹介と、「水探究に向けたヒントについて」と題した講演が行われた。どちらも興味深い内容で、さまざまなキーポイントが隠されていた。今回のセミナーは、今後の探究活動を進める上で、大いに参考になることだろう。

終了後、参加した高校生に感想を聞いてみた。
「小学校の頃から北杜の『水』についての学習をしてきてふんわりとしたイメージはあったのですが、企業の話を客観的な視点で聞くことで、この地域の水の素晴らしさを改めて実感することができました。この魅力を全国ひいては世界の人々に伝えられるよう、みんなで協力して取り組んでいきたいと思います」(北杜高校1年生)
「北杜市にあるさまざまな企業がどんな活動をしているのかを知ることができ、貴重な経験ができました。私たちの体の大部分は水なので、自分の体に入るものについて理解を深めなければと思いました。探究活動では、飲料ではなく観光資源としての水をテーマに、私たちの視点で新しい魅力を探り、発信していけたらと思っています」(甲陵高校2年生)

このプロジェクトを通して、約250名の高校生は、何に気づき、何を考え、どんな答えを導き出すのだろう。そのとき、彼らの中にどんな思いが芽生えるのか、自分たちのまちにどんな未来を思い描くのか。彼らの成長と、来年2月のプレゼンテーションが楽しみだ。
水の山ユースアイデアプロジェクト第1回-03水の山ユースアイデアプロジェクト第1回-04水の山ユースアイデアプロジェクト第1回-05水の山ユースアイデアプロジェクト第1回-05

水の山セミナー

第一部:天然水の森の活動について

サントリーにとって、水はとても大切です。良質な地下水は森で育まれるので、私たちが工場で使う地下水よりも多くの水を、水源・涵養エリアの森で育まなければいけないよねということでスタートしたのが、「天然水の森」という活動です。
2003年に熊本の阿蘇からスタートして、今年で20周年を迎えます。今、全国に22か所、面積で1万2000ヘクタールの「天然水の森」があります。北杜市が大体6万ヘクタールですから、北杜市の5分の1くらいの広さになります。ここはサントリーの土地ではなく、県や市町村と無償で整備させていただく協定を結んでいます。私たちが汲み上げる地下水量の2倍以上を生み出すことで、地元に還元するという思いで取り組んでいます。
水は、降った雨がそのまま飲料水になるのではなく、土壌に沁み込んだ水が長い時間をかけて硬い岩盤層を浸透していき、その過程で不純物が取り除かれミネラルが溶け込んで、地中深くに到達したときに美味しいミネラルウォーターになっているのです。降った雨が地下水になるまで、大体20年と言われています。我々は、そうして生まれた地下水を汲み上げ、「天然水」として皆様にお届けしています。
北杜市周辺は水量、水質ともに豊富なエリアで、花崗岩の地層に磨かれた、すっきりとキレが良く、さわやかな清涼感が、南アルプスの天然水の特徴です。
ところで、森の活動では、ありのままを保全するのではなく、ある程度人の手を入れていかなければいけないと考えています。暗い人工林は雨が降ると土壌が流されてしまいますが、適度に間伐をして光を入れてあげることによって、さまざまな草木が生え、小動物が来るようになって、ワシとかタカといった猛禽類を頂点とした生態系ピラミッドができる。彼らの力を借りて、木々の足元には、スポンジのようなフカフカの土壌が出来上がる。そこに雨が沁み込むことで、豊かな水が育まれる。私たちは、そういった森を目指していて、鳥の専門家、植物の研究者など、いろいろな人の力を借りて森づくりを行っています。
南アルプスでは、1000ヘクタール近い森を協定によって使わせていただいています。ここでも、いろいろな専門家の力を借りて生態系ピラミッドを作っていますし、弊社の水科学研究所のメンバーが森の中に入って水質検査なども行っています。またそれ以外にも、「天然水の森 南アルプス」のホクギノ平では花崗岩が風化して斜面崩壊が起こっているので、周辺のカラマツを間伐材でとどめをして、ヤシネットをかけて植樹をするという活動もしています。植樹から10年経ってようやくある程度植生が戻ってくるという、息の長い事業です。
 こうした思いを通じて、ではどうやって製品になっていくのか。そこについては、11月の工場見学で学んでいただければと思います。

水の山ユースアイデアプロジェクト第1回-サントリー水の山ユースアイデアプロジェクト第1回-07

第二部:人々の水意識とミネラルウォーター

今世の中で、およそ7割強の方が、水は買うものだと思っていらっしゃる状況です。まさに、ミネラルウォーターは生活必需品になっているのかなと思います。それが、わずか30年前は、「水にお金を払うなんて!」という状況でした。今の高校生には想像できないかもしれないけれど、水は買うものではなかったのですね。

この30年間、水そのものは変わっていません。変わったのは、人々の意識です。言い換えれば、人々の意識の中で、ミネラルウォーターが持つ価値が変わってきたということだと思います。実際、この30年でミネラルウォーター市場は30倍以上に右肩上がりで成長してきています。
そして、その過程でもいろいろな変化があったように思います。高級な食事に合わせる「グルメな水」というのが、ミネラルウォーターの最初の認識です。その後、海外からミネラルウォーターが入ってきて、「おしゃれな水」というような価値観が出てきた。一方で、国内の水不足などの影響でより安全な水への意識が高まり、海外より国内産の方が安心だという価値観も生まれます。

さらに、健康志向と共に、「健康に良い水」という捉え方が出てきたり、2011年の東日本大震災以降は、もしもに備えて水を確保しておくと安心だという意識が浸透して、「備える水」という役割が出てきたり…。水に対する価値観が、どんどん変わってきました。その結果、今や7割強の人が水を買うのは当たり前と考えるようになり、家に備えるのは当たり前という感覚にもなって、インフラ化してきているように思います。

また、直近を見ると10年前に備える水としてどんどん家庭内にミネラルウォーターが置かれるようになり、冷蔵庫にミネラルウォーターがあるのが当たり前となった結果、私などは子どもの頃の飲み物は麦茶でしたが、今では、喉がかわいたらミネラルウォーターを飲んでいるという方が増えています。そして、それによって、10代、20代の方が外で飲み物を買うときに自然に水を手に取るという現象が起き、飲み始めると習慣化するということも起きています。

このように、ミネラルウォーター市場の成長の背景には、その時々の社会状況や世の中の価値観の変化があります。最近はさらに、備える水から、楽で賢い水。常に私の隣にあって喉を潤してくれる良い存在。そんな風に水に対する意識が変わってきているように感じます。
これだけ見ただけでも、この30年間に、水と人との関係はどんどん変化していることがわかります。みなさんが水の探究をされるにあたっても、これから世の中がどう変わっていくのだろうかということを考えてみてはどうでしょうか。今日のテーマになっているサステナブルも一つのポイントかもしれません。世の中に目をやると、AI、人生100年時代、ダイバーシティ…、価値観や社会構造などに関するいろんな情報が入ってきます。そういったものと、水、あるいは水を捉える人の意識がどう変わっていくのかということに少し思いを巡らしてみると、探究のテーマとしてよりおもしろいものが見つかるのではないかと思います。

キーワードは、「変わる、変わらない、変える、変えない」。少しずつ変わっていく世の中にあって、何を変えて、何を変えないのか。水を真ん中に置いて考えてみていただけたらと思います。
水の山ユースアイデアプロジェクト第1回水の山ユースアイデアプロジェクト第1回-09水の山ユースアイデアプロジェクト第1回-10

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