ミズくまくん

世界に誇る「水の山」プロジェクト ABOUT "MIZUNOYAMA" PROJECT

ミズくまくん

「水の山」コラム

#017 株式会社 アルソア慧央グループ / 山梨銘醸 七賢

北杜の名水が支える営みを巡り、新たな視点が開けるひととき。

北杜市民や水に関心のある人など、より多くの人々に水の山について知ってもらうための、新たな取り組みがスタートしている。その第一弾となるのが、SNSを通して参加者を募って行われる「水の山パートナー企業を巡るツアー」。11月7日には今年度2回目となるツアーが実施された。
この日訪ねるのは、小淵沢地区に本社を置く「アルソア慧央グループ」と、白州で日本酒を造り続けている「山梨銘醸株式会社」の2社だ。

ツアー概要

13:10 北杜市役所発 → 13:10 アルソア着 企業紹介、製品体験、本社見学 →15:45 アルソア発 →  16:15 山梨銘醸着 企業紹介、北原家住宅見学、試飲 → 17:00 山梨銘醸発 → 17:30 北杜市役所着 解散

午後1時10分に北杜市役所に集合したのは、3名の参加者。簡単な自己紹介の後、さっそくワゴン車に乗り込み小淵沢地区にあるアルソア本社へと向かう。

水と空気に恵まれた、自然豊かな小淵沢で、
さまざまな取り組みを実践しながら、
自然との調和と、真の健康と幸せの創造を目指す ~アルソア慧央グループ

化粧品公害が社会問題になっていた1972年に、肌トラブルに悩むすべての人々に光を与え「世界一美しい日本女性の肌を健やかに蘇らせたい」と、黒い石鹸「クイーンシルバー」を生み出し、東京渋谷で創業したアルソア慧央グループ。1998年に「人と自然との調和の中に、真の健康と幸福を創ります」という企業理念を実現するため、美しい水と豊かな自然を求めて北杜市小淵沢町に本社を移転し、「水」と「ミネラル」を重視した化粧品・健康食品の開発をはじめ、有機自然農法を実践する農場の経営やレストランの運営などに取り組んでいる。
中央道小淵沢ICのほど近く、「道の駅こぶちさわ」の真向かいに位置する深い森の中にあるアルソア本社。自然と調和しながら「水」のエネルギーを活かす、機能を追求するだけでなく、「心」を満たす空間を作るという2つのコンセプトのもと、イタリアの世界的な建築家マリオ・ベリーニ氏が設計した社屋は美しく、俯瞰すると、まるで翼を広げた鳥のような形をしているという。
社内に招き入れられ、サロンへと案内された一行。ほどなく広報担当の目黒さんからの企業紹介が始まった。

水の山ツアー -2025- アルソア

「こちらは、弊社の原点ともいうべき黒い石鹸『クイーンシルバー』です。これは、化粧品公害が社会問題となるなか、弊社の創業者が、『本当に望ましい化粧品とは何か』と考え、温泉水に含まれるミネラルの美肌効果に着目して作り上げました。当時、肌トラブルに悩む方々に使っていただいたところ、非常に効果があるということで口コミで広がり、おかげさまで53年経った今も販売し続けています。

渋谷で創業した我々は、創業時からの企業理念である『人と自然との調和の中に、真の健康と幸せを創る』を具現化するため1998年5月にここ小淵沢に移転し、『食』の事業や農業の実践も新たに始めました。

例えば、移転と同時に設置したのが、マクロビオテックスの考え方を取り入れた料理を社員に提供する、日本初のオーガニックの社員食堂です。極力同じメニューを重ねないようにと工夫を重ね、現在に至るまでに約3000種類のレシピを開発しています。
農場も始めました。こちらでは、『土壌環境を考えた循環型農業』すなわち、自然を生かしながら野菜を作り、農薬や化学肥料には一切頼らないという農業を実践するとともに、従来の考え方にとらわれない 新しい農業を創出する活動を通して、食・農・土壌を追求しています。栽培した野菜は、弊社の商品の一つである『酵素』の原料としています。

会社として、今でいうSDGs にも長年取り組んできました。
その一つが社会貢献活動。世界に1億人いると言われているストリートチルドレンの救済活動や、登山家の故田部井淳子さんが始められた、東北の子ども達に、日本一の山を登り自信をつけて東日本大震災復興の力になってもらおうといった活動に参加しています。

また、製造を担う佐久工場では、製造工程でのエネルギー消費量の削減、森林の植樹や河川敷の清掃など、地域と連携しての環境保全活動の実践、生産プロセスで排出される廃棄物の活用を行っており、特に廃棄物については、パッケージの見直しや徹底した分別などにより、すでに99%以上の再活用を実現しています。

さらに、製品の一つである『酵素』については、小淵沢の農場で原料となる野菜を栽培し、佐久工場に運んで飲料を作っているのですが、製造過程で生じる残野菜を堆肥 にし、再度小淵沢の農場に戻して肥料として使うなど、土から生じたものを土に戻して循環させるといったことにも取り組んでいます。

水の山ツアー -2025- アルソア水の山ツアー -2025- アルソア

続いて、アルソアが提唱するスキンケアのデモンストレーションが始まると、手際よく石鹸を泡立てるスタッフの様子に驚いたり、スキンケア商品の使い心地の良さにうっとりしたりする参加者の様子が見られた。
最後は、社屋内の見学。スタッフに案内してもらいながら、銀箔で覆われた繭玉のような会議室「コアルーム」でリラックスしたり、大量の水が湛えられた円形の池を囲んで広がる中庭で、南アルプスを一望してうっとりとしたり…。社内のあちらこちらに飾られている藍染の作品も楽しみながら、アルソア慧央グループの世界観を満喫した。

水の山ツアー -2025- アルソア水の山ツアー -2025- アルソア水の山ツアー -2025- アルソア

創業は江戸時代中期。白州の水に魅せられ、
香り高く味わい深い日本酒を作り続けつつ、
未来を見据え、世界への発信も始めた老舗酒蔵  ~山梨銘醸 株式会社

アルソア本社を後に、一路向かったのは白州地区にある山梨銘醸株式会社。約30分のドライブで、台ケ原に到着した。

山梨銘醸株式会社は、山梨を代表する日本酒のメーカー。江戸時代中期から、甲州街道の宿場町「台ケ原」で、白州の水を仕込み水とした日本酒を造り続けてきた老舗の造り酒屋である。江戸時代から続く酒蔵で、白州の水や米を使用した伝統的な酒造りを続けるとともに、発泡酒や化粧品といった新たな商品の開発にも積極的に取り組み、日本の酒を世界へも発信している。また、酒蔵は明治天皇の行在所ともなった歴史的価値のある木造建築で、現在は山梨県指定有形文化財にも指定されている。

長い歴史を感じさせる、風格のある酒蔵に案内された。ほのかに日本酒のかぐわしい香りが漂うなか、川端下さんの案内が始まる。

水の山ツアー -2025- 山梨銘醸 七賢

「弊社の創業は1750年、江戸時代からこの場所で酒造りをしています。この辺りは、古くは甲州街道の台ケ原宿で、昔は旅籠が4~50件も軒を連ねていたそうです。本家があった高遠から甲州街道を通って江戸に行く際に休憩をとる台ケ原宿で飲む水のおいしさにほれ込み、ぜひこの水で酒を造りたいと、高遠の北原家から分家し、まさにこの場所で275年前に酒造りを始めました。

この酒蔵は約190年前に5代目が建てた自宅になります。昔は杜氏を新潟から招き、約半年間、24時間体制で酒造りをしていたため、杜氏が連れてくる20~30名の蔵人(働き手)の仮住まいにもなっていました。」

興味深げに、天井や周囲を見回す参加者たち。歴史の重みを感じているようだ。促されて建物内に入ると、明治天皇の行在所を含む施設のガイドツアーが始まった。

水の山ツアー -2025- 山梨銘醸 七賢水の山ツアー -2025- 山梨銘醸 七賢

「1880年、明治天皇が、東京から伊勢神宮へと向かうご巡幸の途中で、当家に一泊されました。2~300人ものお供の方を引き連れての大行列だったようで、その日は宿場町全体が貸し切り状態だったようです。

当時、神様と崇められていた天皇をお迎えするのはとても名誉なことでした。北原家でも、浴室やトイレを新築したり、新たに井戸を掘ったりと、いろいろな準備をしたようです。
一方で、神様である天皇に接見できる人はごく限られており、6代目の2人の息子だけが、侍従という身分をその日限りで与えられ、食事の配膳などのお世話をさせていただいたそうです。

この部屋には、お世話をしたお礼にと御下賜された、明治天皇がお使いになった箸や、行在所として利用したお礼としていただいた目録などを展示しています。目録によると、絹の反物と、金伍拾圓、今の貨幣価値で100万円弱をいただいたとあります。

なお、神様が使った尊い場所を平民が使うことはできないと、明治天皇のために用意した浴室やトイレは直後に取り壊され、門や屋敷も使われることはなくなって、現在に至っています。

さて、この上方に見えるのが、初代が高遠藩の城主から新築祝いにいただいたと伝わる欄間です。葛飾北斎の描いた「七賢人」が一枚板の上に精巧に再現されており、表裏がなくどちらから見ても同じ絵柄が楽しめるという特徴もあります。私どもは、古くは「大中屋」という屋号で商売をしていたのですが、昭和元年に「山梨銘醸」という会社を創り、この欄間をもとに酒の銘柄を「七賢」としました。」

続いて、施設内にあるショップ「酒処 大中屋」で、お酒の説明を受けながらの試飲タイム。車の運転の心配がない参加者は、フレッシュな生酒や香り高い大吟醸などの試飲を楽しんだ。また、全員が仕込み水の試飲もさせてもらった。

水の山ツアー -2025- 山梨銘醸 七賢

参加者
「仕込み水は、柔らかくて軽い口当たりですね。とても飲みやすいです。」
山梨銘醸 川端下さん
「ありがとうございます。これが私どもの初代 北原伊兵衛が魅せられた白州の水です。創業時から現在に至るまで、変わらず使用し続けてきた私どもの源です。」
参加者
「大吟醸は値段が高い分おいしいのではないかと思いがちですが、実際にはどうなのでしょうか?」
山梨銘醸 川端下さん
「好みもありますし、どのような場面で飲むかにもよりますね。大吟醸は香り高く甘さがあっておいしいことは間違いないのですが、お料理と一緒に楽しみたいという場合には、いささか香りや甘みが強すぎるかもしれません。そうした場合には、純米や純米吟醸の方が、香りが抑えられていてすっきりとした飲み口なので、お料理もおいしくいただけるように思います
参加者
「大吟醸を楽しむ際の、おすすめの方法はありますか?」
山梨銘醸 川端下さん
「大吟醸は、お酒そのものを味わっていただくのが一番良いと思います。冷やして飲んだり、ロックにしてもおいしいですね。また、おつまみを用意するなら、あまり香りのない、たんぱくな味わいのものがおすすめです。」

最後はそれぞれ買い物も楽しみ、ツアーは終了。飲めなかった日本酒を購入して、「今夜さっそくいただきます」と嬉しそうに話す参加者や、花糀由来の天然成分「糀糖」を使ったハンドクリームを購入する参加者の姿も見られた。

水の山ツアー -2025- 山梨銘醸 七賢水の山ツアー -2025- 山梨銘醸 七賢

参加者の声

 私は隣の南アルプス市に住んでいますが、以前から、同じ山梨県なのに北杜市には全然違う魅力があると感じ憧れています。特に水に関しては、南アルプス市にはない財産なので、それを北杜市がどうやって守っているのか、どんな企業が何を作っているのかが知りたくて、今回参加しました。やっぱり北杜は良いですよね。今日はアルソアさんと七賢さんからしっかりと企業として姿勢や取り組みをうかがうことができて、『だから北杜なんだ』という理由も知ることができたので、味わい深かったです。

 食に携わる仕事をしていることもあって、以前から水に興味がありました。加えて北杜市にはよくパンを買いに来たりして親しみがあったので、この機会にもっと知ることができればと思い、参加しました。
今日はアルソアさんのおかげで手がすべすべになりましたし、お酒の勉強もできて、有意義な時間になりました。やっぱり水って大事なんだなと、改めて再確認する機会にもなりました。

 他県出身の大学院生です。山梨に来てワインのことを学ぶ機会があったので、日本酒の作り方を知り、比べられたら楽しいなと思って参加しました。来春には就職で山梨を離れるので、その前に「水」というこれまで知らなかった魅力に触れることができてよかったです。また、アルソアさんが企業として行っている斬新な取り組みも、とても興味深かったです。建物にもさまざまなこだわりがあり、世の中には、確たる理念を持ってこうした活動をしている企業もあるんだと、新鮮でしたし勉強にもなりました。

水の山ツアー -2025- 山梨銘醸 七賢山梨銘醸 葛飾北斎 七賢人 欄間アルソアから望む甲斐駒ヶ岳

株式会社 アルソア慧央グループ

住所
山梨県北杜市小淵沢町2961
電話番号
0551-20-5000
URL
https://www.arsoa-keio-group.co.jp/

山梨銘醸 七賢

住所
山梨県北杜市白州町台ヶ原2283
電話番号
0551-35-2236
定休日
元日
営業時間
9:30~17:00(10月~3月は16:30まで)※直営店営業時間
URL
http://www.sake-shichiken.co.jp/

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