観光客でまち全体が賑わう夏が終わると、北杜は日常を取り戻したかのように静かになります。少しさみしい雰囲気ではありますが、八ヶ岳からの風が吹きおろし、空気がきりっと冷たく澄む冬は、南アルプス、八ヶ岳、瑞牆山・金峰山などの名峰をまるっと見渡せる空の広い北杜が、最も魅力的に見える季節かもしれません。

雪がとけ、山の水が動きはじめると、北杜の一年が本格的に動き出します。田んぼを満たす水、里を潤す小川、やがて川となって流れ下るその水は、南アルプスの深い森や土が育んだもの。私たちが何気なく飲んでいる水や、北杜を代表するお米やお酒、そのすべての源は健やかな山の環境にあります。
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しかし近年、北杜の山々でも変化が進んでいます。長年の風雨や登山者の増加、野生動物の食害などにより、登山道の崩れや水の流れの乱れが目立つようになってきました。土が流れ出せば、植物は減り、森は乾き、やがて下流の田畑を潤す水も減っていきます。山の荒れは、麓の暮らしへ影響を及ぼしていくのです。


そんな山の“いま”に向き合い、守る活動をしている「北杜山守隊」をご紹介します。山守隊は、南アルプスエリアの山(甲斐駒ヶ岳黒戸尾根、日向山、尾白川渓谷)を中心に、崩壊した登山道や水の通り道を修復し、水を蓄える力のある豊かな山を未来へつなぐ活動を行っています。
山守隊の活動は、「観光」と「環境保全」をかけ合わせた環境保全ツーリズムとして、市内外の人が参加できるワークショップのかたちで実施されています。ワークショップの前半では、インタープリター(自然案内人)が案内役を務めます。かつてこの山々と人がどのように関わってきたのか、登山道のまわりに生きる植物や動物たちがどんなつながりを持っているのか。参加者は山を歩きながら、自然のしくみや地域の歴史をひもとき、山が持つ「生きている循環」を体感していきます。


観察を終えると、技術者のリードのもと、崩れた登山道を目の前にして「どう修復するか」をみんなで話し合います。水の流れを読み、周辺から倒木や枝葉、土砂を選び、手作業で補修を進めていく。前半の観察の時間で習得したことを活かしながら、頭と体を使って、自らの手で山をなおす時間は、とても楽しくクリエイティブ。参加した誰もが、それまでとは全く違った視点で山を見て、考えるようになるきっかけになっています。


北杜山守隊の活動は、特別な技術を持つ人だけが参加できるのではありません。山を歩くのが好きな人、自然の仕組みに興味がある人、北杜というまちに関わってみたい人。 誰もが、北杜の山に触れる入口として、この活動に参加することができます。
山を守ることは、暮らしを守ること。そのつながりを大切にしながら、北杜では地域の皆さん、北杜に訪れてくださる方、行政、民間企業、民間団体が連携しながら続けています。
北杜で、新しい“山との関わり方”を見つけてみませんか。
文 / 高橋 知砂
北杜山守隊公式ホームページ
※ワークショップの開催日程は、メニュー「お知らせ」からご確認ください。公式Instagramでもお知らせしています。