北杜市民俗文化財と行事の紹介(11)~(15)

  1. (11)北杜市の民俗:ムシオクリ(虫送り)
  2. (12)北杜市の民俗:お盆さん
  3. (13)北杜市の民俗:稲刈りのこと

(11)北杜市の民俗:ムシオクリ(虫送り)

掲載:広報ほくと2006 7月号 No.21 p.16

大正生まれの古老がなつかしむ「虫送り」。

ムシオクリ

「オークリナ、オクリナ。イネノムショウ、オクリナ」
桑の小枝など燃えやすい木の枝や竹を、直径10cm、長さ2mくらいにまとめ、縄で所どころをしばってつくった大きな松明(たいまつ)。日の暮れるのを待って、何本ものこの松明に火を灯し、鐘と太鼓を打ち鳴らしながら「イネノムショウ、オクレ(稲の虫送れ)」と、集落と田をひとまわり。
山近くなどの決められた「虫送り場」まで、松明の煙(けむり)にむせびながら、ぞろぞろと行列をつくって大人や子どもが歩く年中行事が、「虫送り」です。7月の土用(どよう)(7月20日頃)からおよそ3日後、「土用三郎(どようさぶろう)」と呼ばれる日が「その日」だったと言います。ちょうど稲の穂がふくらみはじめるころで害虫の発生時期。どの家からも人が「出動(しゅつどう)」して、松明に集まる虫を水田から遠く離れた場所まで送りこんで追い払いました。害虫発生の原因は虫の姿で出現した悪霊によるもの。この考えが、虫送りの由来。虫を丁重に鎮めて送ることで害を防ぎ、併せて豊作を祈願するこの習わしは、薬剤散布が普及する前の害虫駆除の方法でした。
1953(昭和28)年の冷害の年まで続いていた高根町のある地区では、20年前から復活させ、公民館活動として現在も行っています。


(12)北杜市の民俗:お盆さん

掲載:広報ほくと2006 8月号 No.22 p.18

「お盆さん、お盆さん。この明かりで、おいでんなって」

お盆さんが乗ってくる牛馬

「・・・この明かりで、迷わずおいでんなって」お盆の「迎え火」でお迎えするのは、祖先の精霊(しょうりょう)。北杜あたりではお盆さんと呼びます。お盆--盂蘭盆会(うらぼんえ)の略--とは、祖先を「この世」に迎えて皆で一緒に過ごし、また「あの世」に送り出す、という仏教行事。近場の小川で火を焚き、おいでになったお盆さんを背負っ(たフリをし)て家に帰り、盆(ぼん)棚(だな)まで行って棚の上に下(お)ろします。
さて、次のメモは、K家のお盆行事の流れです。

  • 8月7日[七日墓(ナノカバカ)](墓参り)
    養蚕(ようさん)農家は、5日頃まで多忙だったので、墓参りは7日。持参物/線香・洗い米・花・寺オクリ(心付け)
  • 13日[盆棚づくり]午前
    蚕(カイコ)がアガって空いた部屋に棚をつくる。盆棚に置くもの/キウリの馬とナスの牛1頭ずつ・農作物・菓子・掛軸
  • [迎え火]夕刻
    祖先の霊をお迎えする。用意するもの/麦ワラでつくった直径約10センチの松明(たいまつ)・線香
  • 14~15日[盆踊りなど]
    親戚が来て拝む。
  • 16日[送り盆]朝
    お供(そな)えをしたあと、盆棚のモノを片づける。お供えモノを箕(み)にまとめて入れる。
  • [送り火]夕刻
    先祖の霊が帰るときは土産の荷物があるので、大きな川に行く。「お盆さん、お盆さん。この明かりでお帰りんなって」
  • [送り火]夕食前
    玄関口で送り火。朝からどこまで帰ったか、無事に着いたか、と心配なので再び灯してあげる。

(13)北杜市の民俗:稲刈りのこと

掲載:広報ほくと2006 10月号 No.24 p.13

9月下旬から10月は、北杜市のあちらこちらで刈り入れが行われています。

カッポシ(刈り干し)

「カッポシ」昭和30年代
稲作の長い歴史から見ると、作業の機械化はつい最近のこと。稲刈りに限っていえば、手押し式稲刈り機の開発が昭和40年頃で、その後普及したのが、刈り取りから結束までできるバインダー。脱穀までのコンバインとなると、昭和50年代。
三〇数年前までの稲刈りは、草刈り鎌とノコギリ鎌の違いこそあるものの、実は江戸時代とあまり変わらない、人の手によるものでした。刈った稲は、刈り田に一面に拡げて乾燥させました。カッポシ(刈り干し)といいました。昭和30年代までよく見られた稲の干し方です。最近はカッポシは見られず、ウシと呼ばれる稲架に、稲の小束を交互にかけて乾燥させています。これは昭和10年代に長野から導入した方式です。
さて、稲刈りが済むと十日夜。春に山から降りてきて、収穫まで守ってくれた田の神様は、再び山へと帰っていきます。


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