北杜市の文化財紹介(26)~(30)

  1. (26)山梨県指定文化財(工芸品) 北野天神社の鰐口
  2. (27)北杜市の埋蔵文化財 宮尾根C遺跡
  3. (28)山梨県指定天然記念物 小淵沢のモミ
  4. (29)山梨県指定天然記念物 箕輪新町のヒメコマツ
  5. (30)北杜市の遺跡 頭無A遺跡

(26)山梨県指定文化財(工芸品) 北野天神社の鰐口

所在地:北杜市小淵沢町3349番地
指定年月日:昭和54年12月28日
掲載:広報ほくと2007 10月号 No.36 p.17

鰐口1

鰐口(わにぐち)とは、社寺の入口、拝殿の前面軒下に吊るし、参詣客がこの前に下がっている綱で打ち鳴らして、神仏に来意を告げるための大きな金属製の鳴具(鈴)で、金鼓(こんく)ともいわれています。扁円・中空で下方には広い裂け目のような横に長い口があります。


鰐口2小淵沢町久保の北野天神社には山梨県の有形文化財に指定されたものが2口あります。この内、1口には銘文が刻まれていました。
銘文の刻まれた鰐口は、大きさ21cmで「奉施入甲州大八幡庄山宮天神口事」「応永十九年壬辰九月廿五施主敬白」と刻まれています。また、「奉施入諏訪方立合大行神」という追刻が見られます。この鰐口は、応永二十四年(1417)に上杉禅秀の乱に加担して甲州市の天目山で自害した甲斐守護、武田信満が寄進したといわれています。
無銘の鰐口は大きさ約21cmで、胴部の中心部に9個の蓮子が刻まれています。両鰐口は室町時代の特色をそなえた優品といえます


(27)北杜市の埋蔵文化財 宮尾根C遺跡

縄文時代と古墳時代のムラ 宮尾根C遺跡
掲載:広報ほくと2007 11月号 No.37 p.24

宮尾根C遺跡1

宮尾根C遺跡は、高根町上黒沢字宮尾根にあります。縄文時代(約5千年前)と古墳時代(1千7百年前)の集落跡で、ふれあい支援農道の新設に伴い2007(平成19)年4月下旬から10月中旬まで事前に発掘調査を実施しました。縄文時代では、竪穴住居24軒とお墓と思われる穴130基ほどが、たくさんの土器や石器とともに見つかりました。珍しい琥珀(こはく)も出土しています。縄文時代の人たちは、自然豊かな八ヶ岳南麓で狩猟採集をしながら生活していました。
古墳時代では、竪穴住居20軒と掘立柱建物5棟が発見されました。寒冷な八ヶ岳南麓は、原始的な稲作には不向きな土地でしたが、古墳時代になると炭焼きなどの山林開発と畑作が本格化して集落が営まれるようになります。宮尾根C遺跡に暮らした人たちは、北杜市の農村社会の基礎をつくったともいえます。
調査中の8月には地元上黒沢地区の遺跡見学会、希望者を対象とした体験発掘会なども行われました。遺跡について詳しく知りたい方は、北杜市教育委員会学術課文化財担当(TEL:0551-25-2019)までお問い合わせください。


宮尾根C遺跡2宮尾根C遺跡3

(28)山梨県指定天然記念物 小淵沢のモミ

所在地:小淵沢町3899
指定年月日:昭和41年5月30日
掲載:広報ほくと2007 12月号 No.38 p.27

小淵沢のモミ1

モミはマツ科の常緑針葉樹で、成長が早く、高木となります。そのため、モミの大木はその地域のラウンドマークとなっています。


小淵沢のモミ2

モミというと山本周五郎の小説『樅ノ木は残った』を思い出す人もいることでしょう。小説では主人公原田甲斐に「樅ノ木は北国の風雪に強い木で、江戸では暖かすぎて良く育たない」と嘆かせていますが、実際には暖かい気候を好む木で、秋田県南部から鹿児島県の屋久島まで分布しています。
この「小淵沢のモミ」は、中央自動車道小淵沢インターの北にあるスズラン池の西側山林中にあります。地上1.3mの高さでの幹の周囲が5.80mという大きなもので、県下では白州町の「白須若宮八幡神社のモミ」(北杜市指定天然記念物。こちらは残念ながら地上10mほどで落雷により折れています。)の5.84mに次ぐ大きさです。樹形が美しく、高さにも恵まれ、県の天然記念物に指定されています。
このモミのすぐ西側には湧水が湧き、この木は御神木として地域の人々に守られてきました。時節柄、電飾で飾られたクリスマスツリーもきれいなものですが、静寂の中のモミの大木も風情があるものです。


(29)山梨県指定天然記念物 箕輪新町のヒメコマツ

所在地:高根町箕輪新町1081
指定年月日:平成5年2月15日
掲載:広報ほくと2008 1月号 No.39 p.24

ヒメコマツ

正月に欠かせない松飾り。ヒメコマツ(五葉松)の盆栽を玄関に飾ったお宅も多かったのではないでしょうか。ヒメコマツは、アカマツ、クロマツなどの葉が2本1束にはえているのに対して、五葉松の別名のとおり葉が5本1束にはえているという特徴があります。


マツボックリ

ヒメコマツは北海道南部から対馬まで広く自生する常緑針葉樹で、尾根や急傾斜の露岩地などに生育するものが多く見られます。葉が3~6cmと短く、密につくことから庭園の植木や、特に盆栽に好んで用いられます。今ではインターネットでの盆栽の取引も盛んに行われています。球果(マツボックリ)はアカマツなどよりも大きく、5~8cmほどになります。
さて、この箕輪新町のヒメコマツは金比毘(こんぴら)神社の裏手にあります。地上3mで主幹が2本に別れており、地上1.3mでの幹周が2.96m、樹高29mを測ります。山梨県内でも最大のヒメコマツの巨樹で、樹勢は旺盛です。
近年、各地でマツクイムシの被害が深刻ですが、ヒメコマツも例外ではなく、山梨県内でも被害の報告があります。適切に管理し、末永く保護したいものです。


(30)北杜市の遺跡 頭無A遺跡

鳩川中流域の弥生首長墓
掲載:広報ほくと2008 2月号 No.40 p.24

頭無(かしらなし)A遺跡は、長坂町塚川字頭無にあります。ふれあい支援農道の建設に先立ち平成19年度の10月から3月にかけて発掘調査を実施し、縄文時代(約4千年前)および平安時代(約1千百年前)の集落跡と、弥生時代(約1千7百年前)のお墓が見つかりました。
注目すべき点は弥生時代のお墓で、周りに溝を巡らす「方形周溝墓(ほうけいしゅうこうぼ)」と呼ばれるお墓が8基見つかりました。大きいものでは溝の内側の1辺が約13mもあります。
1つの方形周溝墓に遺体を埋葬した場所が見つかり、その中から副葬品と考えられる鉄剣1振(画像)と鉄釧(てつくしろ:鉄製のブレスレット)1点(画像)が出土しました。方形周溝墓に遺体を埋葬した所が残っていること自体珍しいのですが、その上、副葬品が出土したことは非常に稀なことです。弥生時代の鉄は大変に貴重なもので、それを手にするほどの勢力が北杜にいたといえます。鉄剣の表面には鞘(さや)の残骸と思われる木質部が付着していました。鉄釧は細く扁平な鉄の棒を螺旋状に巻いて作られています。鉄釧は県内初の出土例です。

北杜市の遺跡 頭無A遺跡
方形周溝墓 鉄剣 鉄釧
方形周溝墓 中央に遺体を埋葬した所があります 鉄剣 長さ約65cm、幅4cm 鉄釧 長さ約10cm、最大幅約7cm

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